『田園の詩』NO.30 「交流の輪」 (1995.6.20)



 5月下旬、愛媛県北条市の難波小学校の6年生が、九州への修学旅行の途中、
当地の山浦小学校に立ち寄り、両校の交流会がありました。

 今年度で5回目になる交流会の、そもそもの発端は、山浦小が平成元年の開校
記念日に風船を飛ばしたことによります。小さな風船は、東へ方向を取り、国東
半島を横切り、伊予灘を越え、はるばると空中を旅して、難波小の児童に拾われ
たのです。

 風船が取り持つ縁で、全く知らなかった小学校と深い繋がりができました。毎年、
難波小の元気な児童による≪伊予万歳≫の「松づくし」の踊りを見ることは、私達、
山浦地区民にとって、楽しみのひとつになりました。

 小さな出会いからネットワークができ、その繋がりを深めあったり、また、それが
大きく広がっていくのは嬉しいことです。

 私は今、仲間と、国東地域に住んで創作活動をしている工芸家達のネットワーク
づくりを進めています。

 国東半島は、仏教者を中心に、道を求める人達の修行の場として、特異の文化を
形成してきた所です。この地の魅力にひかれたのか、Uターンした人を含めて、大勢
の工芸家が移り住むようになりました。


      
     国東半島の中央部、豊後高田市の「川中不動」の裏手の岩屋に『無明橋』が
     架かっています。幅1m位だったでしょうか。立ったままでは渡れませんでした。
     ここより他にも、鎖を持って登るような行者道がいくらでもあります。 (08.6.1 写)


 道端に小さな看板を出したり、自宅の工房で作品展を開いたり、時には新聞に載った
りします。目に付く度に、私は立ち寄って話をすることにしています。職種は違っても、
工人(工芸家)としての生活は同じようなもの、すぐに仲間になります。

 この仲間づくりを進めていって、私達は、「国東地域に工人文化を築きたい」などと
いう大胆な構想を掲げています。そして、「東京でも作品展を開こう」とも話し合って
います。

 田舎の小さな町に住んでいても、毎年出会いがあり、毎日が忙しいほど交流が持てる
ことは有り難いことであり、また、楽しいことでもあります。≪伊予万歳≫は、私共の毎
年の楽しみであり、工家達との交流は、ともすれば怠惰になりがちな私に、創作の活力
を与えてくれます。                     (住職・筆工)

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